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昔は死ぬこともあった歯周病。虫歯に悩んだ歴史上の人物

今でこそ医療技術が発達して歯周病で死に至るケースもなくなりましたが、こんな風になったのもここ100年程度の話です。

それまで歯周病を始めとした感染症は治療方法が現代と比べて非常にお粗末なものだったので、命に係わることも珍しくありませんでした。

そこで、ここでは昔は歯周病はどういう扱いだったのか?という点と、歯のトラブルに悩まされた歴史上の人物についてまとめました。

昔は歯周病=死もありえた

歯周病は、きちんと予防や治療をすれば決して怖い病気ではありません。

加えて、今は抗生物質がありますから、重症化してもきちんと細菌の検査をして、原因の細菌を除菌し、専門的な歯周病の治療をすれば、歯を失うことはあっても死んでしまうようなことはありません。

ただし、歯周病が厄介なのは、痛みや腫れがほとんどなく無自覚のうちに進行してしまうところです。

仮にあなたが「ちょっと歯がぐらぐらしてきたな~。もう少し噛めなくなったら、歯医者にでも行ってみよう」と思う段階になると、もう手遅れで歯を抜かなくてはならないことがほとんどなのです

歯周病は痛みに強く物事を後回しにする性格で長続きしない人が悪くなりやすいと昔から言われてきました。ですから、治療の途中で痛みが治まったり口臭が減ったりすると、中断してしまう人が残念ながら多いのです。

抗生物質が無い時代の歯周病とは

ところで、抗生物質がない時代は、歯周病はどのような病気だったのでしょうか? というより、抗生物質がない時代の感染症は、いかなる病気だったのでしょうか?

飛沫感染する結核やジフテリア、淋病や梅毒といった性感染症、そして破傷風など感染症はすべて、1798年に予防接種が発明され、1929年にペニシリンが見つけられるまで死と直結した病気でした。

虫歯や歯周病などの感染症についても同様です。歯周病は、歯と歯ぐきの間から細菌が入る病気ですが、同じく感染で顎の骨が溶け、虫歯の菌が歯の先まで達して骨の中にうみがたまる病気、根尖性歯周炎というものがあります。

これはいわゆる歯の神経を抜いて治療します。今ではごくごく一般的な歯科治療です。そして、親知らずの歯の周囲に細菌が入って腫れる智歯周囲炎(歯周病の一種)というのもあります。

これら2つの病気は、急性の症状で「歯ぐきが腫れた― 痛い~~」といって、歯医者にかけ込む典型的な病気です。

今では歯医者さんが「ひどい腫れですから、まずは抗生物質と鎮痛剤、そして消毒用のうがい薬で症状をおさえましょう」という治療を行います。

ところが、この抗生物質がなかったら、どうなるのでしょうか? これらの細菌は全身に回り、ほかの臓器を侵すことも決して稀ではありませんでした。

ですから、歯周病も昔は死につながる病気だったのです。

歯周病と歴史上の人物

医学の古典の書物を見ると、歯の治療でいかに昔の人が苦労していたかわかります。

古今東西、たくさんの絵や版画が残っています。多数の人が患者さんを押さえつけたリベル卜でイスに縛り付けたりして動けないように東縛し、ペンチの親分のような1メートルはあるかという抜歯する器具で、無麻酔で抜歯していました。

ちなみに、麻酔は局所麻酔も全身麻酔も1800年代後半に発明されるまで待たないといけませんから、抜歯のみならず、すべての手術は麻酔なしでするのです。怖いですね

さて、その抗生物質と麻酔のない時代の人々の歯にまつわる苦労話をすこし述べましょう

新選組の永倉新八は虫歯が原因で亡くなった?

幕末の歴史は今もって歴史好きの人たちの心を離しません。そのなかでも、新撰組の話は私も大好きです

新撰組といえば、局長近藤勇、副長土方歳三、 一番隊組長沖田総司が有名ですが、二番隊組長に永倉新八という人がいます。

永倉は明治維新の後も生き延び、晩年は東北帝国大学農科大学(現在の北海道大学)の剣道部を指導しました。

その永倉は虫歯に起因する根尖性歯周炎から、その細菌が原因となる敗血症で死亡しました。敗血症とは、血管の中に細菌が入り多臓器不全になる病気ですが、今では抗生物質が発達しているので、虫歯でこのような病気になることは極めて稀です。

源頼朝の死因は歯周病だった可能性がある

初の武家による政治を行った源頼朝。頼朝が死ぬ4年前から歯の病に苦しんでいたことが『吾妻鏡』に書いてあるそうです。

頼朝の死亡説には諸説あり、落馬によるというのが一般的ですが、その落馬の原因が虚血性脳疾患ではないかといわれています。

歯周病にかかると心臓循環器系の罹患率が数倍になるといわれます。『妻鏡』の記載から、歯に問題があったことは間違いないようですから、もしかすると頼朝の死の遠因は歯周病なのかもしれません。

このように歯周病は死をももたらす病気ですから、時の為政者は虫歯や歯周病になることをとても恐れました。

ルイ14世は歯を全て抜いてしまった!

フランスのルイ14世は、侍医の「歯はすべての病気の温床である」という説によって、なんと12回にわたる手術の末、すべての歯を抜いてしまいました。繰り返しますが、麻酔も抗生物質もないのです。

無麻酔で抜歯の手術をした後の止血兼消毒の処置は、なんと焼いた鉄の棒を歯茎に押し当てるというものでした―

しかし、歯を抜いたところが副鼻腔とつながってしまい、食べ物が副鼻腔に入るためにいつもひどい口臭がしていたそうです。

しかも、歯がないので咀唱不良によって常に胃腸の調子が悪く、トインに行く回数が多かったため、衣服にもアレがついて悪臭がひどく、そのおかげで香水が発達したのでは、とさえいわれているくらいです。

アメリカの初代大統領、ワシントンも歯周病だった

アメリカ合衆国の初代大統領ワシントンは20代のころから歯周病に悩まされ(おそらく、歯周病菌感染による侵襲性歯周炎という病気と思われます)、晩年には歯が1本しかありませんでした。

当時は、型をとるシリコンなどありませんから、本を削って作った、本彫義歯というものを使っていました。木彫義歯は精度が低いので、上の入歯が重力で落ちてきてしまうのをスプリングで下の入歯から持ち上げるようにして維持します。

ワシントンが大統領の3選を拒否し立候補しなかった理由が、「入歯では、まともな演説ができないから」だったという説があります。みなさん、米国の1ドル紙幣を見たことがありますか?

1ドル紙幣でワシントンが口を真一文字にしている理由は、本の入歯のスプリングが強力だったため、強く口を閉じていなければならなかったからだともいわれています。

昔の歯周病は今と違って大変だった

源氏物語や枕草子にも虫歯や口臭の記載があります。

このように、歯周病はつい100年ほど前までは、なっても大変、そして歯を抜いても大変な病気だったんですね。

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