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治療よりも予防のために歯医者に行くことが肝心

「歯は治療するもの、歯医者には治療のために行くもの」

虫歯や歯周病はすべて早期に発見して、できるだけ早く治療するものだというのが、これまでの常識でした。歯科医は治療のために存在すると。

確かにそのとおりです。虫歯になった歯を削って治療したり、腫れて歯周炎になった歯茎を治療したり、ぐらぐらした歯を抜いて入れ歯やインプラントにしたり、それが歯科医の仕事なのは事実です。

しかし、あなたが思い込んでいる「虫歯は早期発見・早期治療が最善の方法」ということが、実はすべて正しいとは限らないのです。

ここでは歯医者をどのように活用するのがベストなのか、という点について私なりに思うところを書きました。

虫歯予防で大成功したフィンランド

虫歯は早期発見・早期治療が大事と思われがちですが、そうとは言い切れません。それを裏づける例を紹介しましょう。

先進国でもっとも歯の健康度が高く、子どもの虫歯が少ないといわれている北欧のフィンランドでは40年も前に、子どもたちの虫歯の早期発見・早期治療に力を入れました

ところが、いくら早期に虫歯を見つけ治療をしても、子どもたちの虫歯はいっこうに減らなかったのです。

もぐらたたきのように、治療してもまた虫歯が出てきて再び治療するといったくり返しでした。そこで、フインランド政府は思い切った方向転換をしました。虫歯の予防と国民への予防教育を重視する政策にシフトしたのです。

虫歯予防に舵を切ったところ・・・

フィンランドは国全体で虫歯予防教育に取り組み、子どもだけでなく、両親に対しても予防や歯磨きの大切さを教え、さらに虫歯予防の補助として、フッ素やキシリトールを使用しました。

歯科医師や歯科衛生士を増やし、そのための予算を再検討。歯科医療全体にかける医療費を増やしたのです。

結果、子どもたちの虫歯はみるみる減少し、ひとり当たりの虫歯の数は平均0.8本で、ほとんど虫歯が見られない国になりました。

予防にシフトしたことで虫歯治療にかける医療費が減っていき、結果的に医療費全体の節約になったのです。実は、当時のフィンランドは国の経済状態が悪化しており、医療費を抑える必要がありました。治療より予防のほうが経済的な効率性からみても、安くつくということなのです。

同じ北欧のスウェーデンでも一足先に同様な保健政策が行われており、虫歯を減少させました。

これらの取り組みからわかってきたことは、虫歯は治療するより予防したほうが健康面でも経済面でも、効率的ということだったのです。

現在、このふたつの国は歯科先進国として知られ、歯科治療には予防の概念が貫かれています。大事なのは治療よりも予防なのです。

歯周病対策が遅れている日本

40代以上の日本人の8割以上が罹患しているといわれる歯周病も予防が重要です。子どもたちの虫歯の本数は以前よりだいぶ減少していますが、歯周病が国民病となり、自分の歯が19本以下の高齢者がまだ6割近いのが現状です。歯を失う原因のトップは歯周病なのです。

歯周病は病気の引き金にもなる

最近の研究では、歯周病は糖尿病を悪化させたり、心臓病や動脈硬化の悪化や原因につながったりすることが知られています。また関節リウマチ、早産・流産の原因になるともいわれています。さらに、歯周病で歯を失うと記憶力や運動能力、認知症にも影響をあたえることが、次々に明らかになってきました。

消化器の人り口である口の中で、何十億もの細菌が繁殖し、それが体内に人りさまざまな病気を引き起こすのです。回の中を見ればその人の健康状態がわかるといってもいいでしょう。

歯周病も生活習慣病であり、予防ができる病気です。

歯周病になって治療するよりも、定期的な口腔ケアを続けることのほうがずっと大切なのです。アメリカでは、すでに定期的な口腔ケアをすることが加入条件となっている保険さえあるのです。

予防よりも治療が重要視される日本の歯科

しかし、残念ながらいまの日本の歯科医療では、予防よりも治療が中心になりがちです。

「悪くなってから歯医者に行く」という人がまだまだ多いのが現状です。歯が痛い、歯がしみる、歯茎が腫れるといった自覚症状が出てから歯科医院に行き、仕方なく治療する。その連続。これがいまの日本の歯科医療の常識です。

この常識にとらわれている限り、日本人の歯はなかなかよくならないでしょう。

治療をくり返しても次々歯を抜く羽目になり、最終的に入れ歯になる。そして、その入れ歯が合わずに噛めない人も出てくる。噛めないことで栄養不足となり体力や免疫力が低下し、病気になり要介護となり、最終的には寝たきりになってしまうことも。

噛めなくなると認知症になりやすく、転倒しやすいという研究データさえ出ています。夜中に転倒した高齢者の多くは入れ歯を外していたという調査もあります。高齢者にとって転倒は要介護や寝たきりになる大きな原因でもあるのです。

治療しても噛めなくなったり、病気や寝たきりになるとしたら、これまでの治療中心の歯科医療は、何のためにあったのでしょう?

フィンランドの歯科対策に学ぶ

患者さんの歯と健康を守るためには、フィンランドのような成功例から学び、いい部分を取り入れる必要があります。

日本の国民医療費はおよそ40兆円。この額は保険診療だけのものですから、自由診療も含む実際の医療費は、さらに高額と思われます。

高齢化がますます進む社会では、今後も医療費の増加は避けられないといわれています。病気になったら治すという現在の治療中心の医療制度では避けられないことです。

しかしフィンランドやスウェーデンの前例が示すように、予防医療にシフトすることで、医療費の増加は抑えられます。

さらに、口の中を健康にすれば、生活習慣病や心臓病、肺炎の多くも予防できます。歯科、予防医療にお金をかけることが、結果的に総医療費を抑制することにもつながります。

歯の健康は3200万円の価値がある

歯の健康を経済的側面からみれば、歯・口腔内が健康で虫歯や歯周病がない人は、医療費にして3200万円も得をしているという試算があります。

歯l本の価値は100万円という説があり、人間の歯は親知らずも入れると全部で32本ありますから、総額でざっと3200万円となるわけです。

それだけではなく、両親、妻や子ども、孫へと予防歯科医療をつなげていけば、波及効果が生まれていきます。つまり「健康な歯のファミリーツリー(家系図ご効果とでもいったらいいでしょうか。

これが世代を超えてつながっていけば、個人で3200万円得するだけでなく、家族全員で何億円という価値を生むことになっていきます。これを社会全体に広げていけば、日本全国で何兆円もの価値になり、将来の医療費の増大を抑えることになるのです。

私は何十年も酷使される歯1本は100万円以上の価値があると思っています。歯はかけがえのないもの。簡単に削ったり抜いたりしないで、可能な限り使い続けるためには、治療より予防に重点を置いた歯科医療が進められるべきではないでしょうか。

歯の重要性を訴えた本田宗一郎

実は、これまで述べてきたことを昔からよく理解し、実践してきた日本人がいます。そのひとりが「世界のホンダ」の創業者でありすぐれた技術者であった故本田宗一郎さんです。

詳しくは別ページで述べますが、本田さんはご自分の歯を大切にされただけでなく、後を継ぐ後輩たちに対しても「世界に出ていくために、社長になったら歯を治せ」という名言を残しています。

本田さんは自動車の分野だけではなく、その考え方、生きる姿勢、哲学も世界から一日置かれる超一流人でしたが、歯に対する理解、デンタルIQも高かったのです。

まだまだ遅れている日本の歯への意識

日本の政治家や著名人の中には、口の中を診なくても一目で歯が悪いことがわかる方がまだたくさんいます。

忙しさから歯を治す時間も惜しいのかもしれません。言葉が不明瞭で聞き取りづらかったり、歯の噛み合わせが悪くて、顔が歪んでいる方もいます。40年前と比べ、最近では歯に対する意識が高くなり、歯に気をつかう人も増えてきましたが、それでも海外の政財界やエリート層と比べ、だいぶ遅れていると感じています。

予防を重視してこなかった保険医療制度や国民の歯に対する知識不足も背景にありますが、私個人の意見では、その責任は私たち歯科医にもあると思います。

日本のデンタルケアの意識の低さは歯医者にも責任アリ

いままで多くの歯科医は、病気の原因を追究して再発を防ぐ治療努力をしてこなかった。早くて簡単な対症療法的な治療を最優先としてきたため、虫歯や歯周病の再発をくり返したのです。

結果、患者さん自ら予防のために歯科を受診するという知識や習慣が育たなかったのです。

これからの歯科医に求められることは、再発予防のための情報を患者さんに伝え、その具体的方法を教え、かつ最新の専門知識を学びつつ、患者さんファーストの丁寧な治療を行っていくことだと思います

国民皆保険制度の欠点

日本の歯科医療は保険制度の制約もあり、予防歯科に十分にお金をかけてきませんでした。国民皆保険制度は、誰でも安価に公平に医療が受けられる、世界に誇れる制度ですが、残念ながら欠点もあります。

たとえばひとりの患者さんの性格や環境に合わせて、じっくり丁寧に診る、ときには時間をかけて話を聞くといった診療をしていたら、歯科医院の経営自体が難しくなってしまう。

こういった制度上の問題も一面では予防医療が遅れたひとつの理由だと思います。

自分の歯を治しデンタルIQを上げることは、健康や仕事にもよい影響を及ぼすことにつながります。

専門家の間では今や「歯の寿命=健康寿命」という認識が当たり前になっています。社会的に成功した人が歯を殊更大切にするのにはこういった理由があったからなんですね。

歯は代替の効かない一生モノの宝

高齢者は年齢とともに体全体が衰えてくるものですが、歯がいい人ほど衰えが緩やかで、人によっては若い人に負けない気力、体力を保つことができます

なかには、歯を治すことで若返る人もたくさんいらっしゃいます。生涯現役で、第一線で活躍している人には、歯の健康への知識、デンタルIQが高い人が多いといってもいい過ぎではないでしょう。

歯科医の仕事は歯を守ることで人々の健康を守り、人生をより豊かで快適なものにできるよう尽力することです。

現在、日本の歯科医師の数は約10万4000人。知識や技術、歯科医療への姿勢はさまざまです。

一生のおつきあいとなるかもしれない歯科医師として誰を選び、そしてその人から何を学び、どんなつき合い方をするかで、あなただけでなく、あなたの家族の人生は大きく変わるといいってもいいでしょう。

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