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歯の状態は体の健康に影響する

歯は審美性だけでなく、体の健康状態そのものに深く影響を与えていることをあなたはご存知でしょうか?

歯の本数が少ないお年寄りは認知症になりやすい、というのは多くの人が何となくイメージできるところだと思いますが、歯がガンや脳梗塞にまで影響を与えているとなるとどうでしょうか?

このページでは意外と知られていない歯と体の健康の関連性について解説します。

歯が無い人は認知症になりやすい

いま国をあげて取り組んでいるのが「健康寿命」の延伸です。寿命の長さだけではなく、自立して生活ができ、寝たきりや介護を受けたり、入院をしない期間、いわゆる「健康寿命」を延ばそうという取り組みです。

日本人の健康寿命は男性71歳、女性74歳(2013年厚労省報告)で、平均寿命(2013年、男性80歳、女性86歳)よりそれぞれ9年、12年短くなっています。

つまり、10年前後も要介護状態や入院などで過ごす人が多いということです。

世界一の長寿国を達成した日本ですが、今後の課題はこの健康寿命をさらに延ばし、元気な高齢者を増やすことです。

厚労省が行った調査によると、歯が少ない高齢者や入れ歯の状態が悪くてよく噛めない高齢者は、健康状態が悪化する傾向にあるそうです。さらに、歯を失って噛めない人は、寿命も短くなるという調査結果も出ています。

認知症と歯の関係は調査で明らかになっている

高齢者の健康格差を考える上で、最初にあげられるのが認知症です。認知症の増加は世界の先進国の共通する課題で、WHOの調査によると、「歯の喪失」が認知症リスクのひとつとわかりました。

認知症と歯の関係に関する研究はたくさんあり、「認知症は歯が少ないほど、噛む力が弱いほど、そしてかかりつけ歯科医院がない人ほど発症リスクが高まる」ことが、現在ではほぼ定説になっています。

日本でも厚労省の研究で、歯を失って噛めなくなった人はそうでない人より認知症のリスクが最大1.9倍も高まることが分かっています。

このように、記憶力や認知力が低下することと、噛まなくなることには、明確な関係があることがはっきりしています。

咀嚼は人間にとって大切な営み

噛むことは、私たちが考えている以上に複雑で、多くの神経が関与する高度な脳の働きです。

歯、舌、唇は高度に連携して食べ物を噛み砕き、飲み込みます。また、口は食べ物に混じった砂粒ひとつさえ、簡単に取り出すことができる繊細な器官です。

噛まなくなって、記憶力が低下したという高齢者はよく見られますが、これは噛むための神経や感覚などを覗どる脳の神経が萎縮するためで、よく噛めなくなってくると血流が低下して、脳の細胞死が進んでいくことが原因です。

たとえ、歯を失ってもしっかり噛めるインプラントや義歯を使用すれば、認知症リスクは低下することもわかっています。

もっとも大切なのは歯を失わないことですが、失ったからといって諦めることはありません。そのために私たち歯科医の治療はあるのです。しっかり噛めるインプラントや義歯を入れれば、記憶力の低下は防げるのです。

歯を失って噛む力が低下すると、さまざまな病気にかかりやすくなります。

歯を失うと脳梗塞や癌、肺炎になりやすくなる

歯が無いことのリスクは認知症だけではありません。

たとえば、心血管疾患(CVD)による死亡と歯の数には関連があります。歯の数が少ないほど、心血管疾患で死亡する人が増えるんです。中高年以降に増加する脳梗塞でも同じです。

失った歯が多いほど、脳梗塞の一種であるラクナ梗塞が起きやすいという調査もあります。

ラクナ梗塞とは、いくつかある脳梗塞のタイプの中で日本人に多いものです。脳の深い場所の細い血管が詰まるのが原因です。歯を失うと、このラクナ梗塞が多くなるという調査もあるのです。

また、脳梗塞は血管が詰まることで起きますが、歯周病は動脈硬化の原因や、悪化の要因と考えられています。歯周病がある人ほど動脈硬化になりやすく、脳梗塞のリスクが高まるともいえるのです。

逆にいえば、歯が健康な高齢者は認知症や脳梗塞になりにくいのです。

がんや肺炎予防に効く歯の健康

歯は、がん、呼吸器疾患による死亡との関連も報告されています。

歯の喪失とがん死亡との関連については、日本での調査があり、歯がない人は胃・食道がんで1.4倍、がん総死亡では、20本以上歯のある人に比べて、まったく歯のない人は4.1倍もがんによって死亡しているということです。統計上で4倍以上の開きがあるということは、がん予防のひとつとして歯の健康があげられるということです。

また、歯のない人ほど肺炎の死亡数が増えています。歯を失う原因の9割が歯周病と虫歯ですから、肺炎は歯や口腔の状態と密接に関係していることが、改めてわかります。

2010年の調査では、歯が26本以上ある人とそれ以下の人を比べると、心血管疾患(CVD)死亡は、20~25本の人は1.94倍、15~19本の人は3.13倍、10~14本は3.41倍、10本未満は4.41倍でした。歯が少なくなるほど心血管疾患が増加するのです。

こういったさまざまな調査は、歯を失うことで病気になりやすく、寿命が縮まることを示しているといえます。つまり、病気を予防し、長生きしたいなら、歯の健康を維持することがとても大切なのです。

歯と日の健康は治療によって取り戻せます。年のせいだからと諦めて放置するのはやめましょう

寝たきりの原因はほとんどが転倒

歯のトラブルは病気だけではありません。高齢者の寝たきりの原因の多くを占める転倒事故も、実は歯が関係しているんです。

高齢者の事故の80%は転倒によるものです(東京消防庁2014年統計)。転倒を防ぐことで、寝たきりになるのを防ぐことができ、さらに要介護になるのを減らすことになります。

65歳以上で、歯がほとんどなく、義歯を使っていない人は、歯が20本以上ある人に比べて、転倒のリスクが2.5倍高くなります。それに対して、歯はないが義歯を使用している人は1.3倍で、義歯があれば、転倒リスクはかなり低くなるのです。

普段自宅で生活していて転倒する高齢者も少なくなく、とくに夜中にトイレに行くときに転倒することが多いようです。義歯を使用している人は、夜は義歯を外していることが多いため、バランスを崩しやすくなり、転倒しやすいと推測できます。

転倒からの寝たきりを防ぐには歯がカギになる

転倒を防ぎ寝たきり防止のためには、歯を失う高齢者を減らすこと。自分の歯を失っても、きちんと噛める義歯やインプラントを使用することが必要なのです。

十分に歯があり、きちんと噛むことができると活動量も多くなります。歯がいい高齢者ほど運動をしているのです。

団塊の世代が全員75歳以上になる2025年問題がいまから問題になっています。

認知症や寝たきりなどの高齢者が急増し、介護や医療がパンクすると懸念されていますが、元気な高齢者が増えれば、大きな問題とはなりません。

高齢者の歯が健康で、もし歯を失ってもインプラントや義歯できちんと噛める人が増えれば、2025年問題もだいぶ解消されるのではないでしょうか。

高齢になって寝たきりになるかならないかに、歯は大きくかかわっているのです。

歯の少ない人ほど寿命が短くなる

歯や口腔内が健康で、しっかり噛める人は、意欲や記憶力にもプラスに作用します。

虫歯や歯周病で歯を失い、噛み合わせや歯並びが悪くて噛む力が低下すると、胃腸や脳などに悪い影響を及ぼします。歯を失えば失うほど、寿命が短くなるという調査もあります。

「オーラルフレイル」という言葉があります。これは「歯・回の機能の虚弱」という意味です。

過去の調査によると、虫歯や歯周病などで歯を失い、しっかりと噛んで食べられなくなることで、高齢者が要介護になるリスクが大きくなることがわかりました。

オーラルフレイルにより栄養が十分とれなくなると筋肉が減少し、やがて歩行が困難になり、活動全般が衰えていき、最終的には寝たきり状態になっていくというのです。このことは歯や口の機能の低下は、要介護のきっかけになることを如実に示しています。

つまり、要介護になりたくなければ、まず、きちんと噛んで食べられる歯や口をつくることが必要不可欠なのです。

厚労省が推進している「健康長寿社会」の第一歩は、口からといっても過言ではありません。

歯と寿命の関係性はデータで証明されている

これまで世界中で、歯と口腔の健康が心身に与える影響に関する多くの研究が紹介されており、内外の信頼できる研究を集めています。

なかでもイタリア、北欧諸国、ドイツ、アメリカ、日本、中国など36の研究論文から得られた結果は、注目すべき報告といえます。

歯が多く残っている人は寿命が延びる、また、歯を失っても義歯などを使って噛めるようにすると、寿命が延びるというのです。

同様の研究はこれまでも日本や海外でもたくさん行われており、2006年の日本の調査(対象80歳以上l18人)では、20本歯のある人と比べ、その本数以下の男性の死亡率は、2.7倍でした。

アメリカでも同様な調査があり、平均年齢57歳の500人を調査したところ、歯が20本以上ある人に比べ、19~1本の人は死亡率が2.2倍、ゼロ本の人は1.8倍でした。デンマークやスウェーデンなどでも同じような結果が出ています。

ただし、歯を失えば長生きできないというわけではありません。要は、きちんと噛んで食べられることが大切なのです。歯がなくてもインプラントや義歯などを使って噛めていれば、歯のある人とそれほど大きな差はありません。

噛んで食べないと低栄養に

病気や怪我からの回復力は、人によって違いますが、食事から栄養をとることが回復には絶対必要です。その場合、自分の歯で噛んで食べることが、とても重要だと私は思っています。

高濃度栄養液や胃痩による栄養摂取の場合は、必要な栄養素を入れているにもかかわらず、実際に食べる場合とはまったく違います。また、医療や介護の現場では、普通の食事は窒息などの危険があるという判断で、流動食にすることがあります。

もちろん、必要な場合はありますが、できるだけ早く普通食生戻さないと、体が回復して体調がよくなっても、普通食が食べられなくなることもあります。

食べることは歩くことと同じです。その機能を使わなくなると、その部分がどんどん衰えていく廃用症候群になります。そして、いったん食べる機能を落としてしまうと、元に戻すには専門的なリハビリが必要になり、時間もかかります。

介護現場では人手不足などの事情もあり、やむをえず刻み食やおかゆ、ミキサーでどろどろにした「ミキサー食」などを入所者に食べさせている所もありますが、できるだけ普通の食事をするほうが誤囁性肺炎や低栄養を防げるのです。

歯や日の健康を維持することは、介護者や医療現場の負担を減らすことにもつながります。

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