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フィンランドに虫歯がほとんどない理由とは?

世界でもっとも虫歯の撲減に成功した例としてよくあげられるのが、フィンランドです。

フィンランドは1972年に健康基本法という法律をつくり、虫歯予防のプログラムを法制化しました。

具体的には、母親と子どもの健診、予防、教育を全国の保健所で実施し、ミュータンス菌の検査、歯ブラシ指導、フッ素塗布、食事指導、キシリトールの普及などを行っていったのです。

ここではそんなフィンランドのオーラルケアについて詳しく説明します。

虫歯大国から虫歯ゼロになったフィンランド

フィンランド

1970年代、フィンランドの国民ひとり当たりの虫歯の本数は平均6.9本ありました。

1975年の日本では5.6本だったことを踏まえると、意外にも当時のフィンランドは日本よリ虫歯が多かったんですね。

日本も最近では子どもの虫歯がだいぶ減り、12歳の虫歯本数は平均0.9本と歯科先進国並みになりました。が、2016年度統計では、虫歯がある者の割合(処置完了者を含む)を見ると、幼稚園35%、小学校48%、中学校37%、高等学校49%と、およそ半数の子どもが虫歯を経験しています。

フインランドは国家レベルで虫歯対策を行い、1990年代には世界でもっとも虫歯が少ない国になりました。

2006年の虫歯比較だと、日本は平均は1.7本、フィンランド1.2本でしたが、現在のフィンランドでは0.1本という地域もあるくらいです。

「国民健康法」で虫歯予防を進めたフィンランド

元々、フィンランドは1950年代の時点で虫歯の早期発見・早期治療を勧めていました。

ところがそれから20年たっても、子どもたちの虫歯は減りませんでした。むしろ、増えていく一方だったのです。

そこで国は1972年に方針を変更。国民健康法を制定して虫歯を積極的に予防する予防歯科医療に舵を切ったのです。

この背景には、当時子どもの虫歯治療のための医療費が大きな負担になっていたことがありました。

金額を計算したところ、虫歯治療の医療費>>>予防にかける予算、という試算が出たのです。

予防歯科は医療費を節約するために導入されたのです。

ちなみに、フィンランドと同様に虫歯の少ないスウェーデンでは、30年以上前から虫歯予防のため歯科衛生士が小学校に派遣され、虫歯予防の教育とフッ素を塗る処置を行っています。日本の歯科界でもようやく予防歯科の大切さが喧伝されはじめましたが、フィンランドやスウェーデンと比べるとまだまだなのが現状です。

現在、フィンランドには、9割の子どもに虫歯がないという地域すらあるほどです。虫歯の存在すら知らない子どもがいる というのだからビックリですよね。

フィンランドがやった3つの虫歯予防

1.国民の歯の教育をしっかり行った

まずフィンランドでは歯科大学を増設して歯科医師の数を増やし、次に国民への教育を行いました。

虫歯は感染症であることや、フッ素やキシリトールで虫歯は防げることも教育で広めました。また、妊娠初期から子どもの虫歯を防ぐために母親への教育を始めるなど、虫歯予防を推進する運動を政府が行いました。

キシリトールに関する研究も多く行われました。たとえば、

  • 子どもがキシリトールガムを2年間噛むと子どもの虫歯が3分の1になる
  • 出産後の母親が2ヵ月間ガムを噛み続けたら、子どもたちの虫歯が4分の1になる

など多くの研究報告が出されています。

2.虫歯にフッ素を塗布した

フィンランドの国民健康法で特に注目すべきがフッ素の使用です。フッ素は歯の表面に鎧をまとうようにつき、歯を丈夫にしてくれる効果があります。

歯の表面にはアパタイトという硬い成分があり歯を守っています。

しかしアパタイトは表面をきっちり埋めているわけではなく、 瓦のようにちょっと隙間があります。

瓦

フッ素はこのアパタイトと同類のもので、その隙間を埋めることで歯の表面を硬くしてくれるんです。

こうすることで虫歯菌に負けない歯ができます。

そして、一番重要なのは永久歯が生えた瞬間です。永久歯は無菌状態の皮膚の中から、菌がたくさんある口の中に出てくるものです。

ですから、フィンランドでは歯が生え替わる6歳~12歳までの6年間は、とにかく出てきた永久歯を守るために、頻繁に通院してもらい、フッ素を塗布するのです。

家庭でもフッ素入りの歯磨きペーストを使ってもらいます。フッ素はもともと歯や骨をつくる体にとっての必須栄養素です。

毎日の歯ブラシのときにフッ素を入れておき、歯が生えてきたときを逃さずコーティングすることがとても大事なわけです。

3.キシリトールで虫歯予防をした

フィンランドでは、歯磨きやフッ素のほかに、食後のキシリトール摂取が推奨されています。それがフィンランドの虫歯を激減させた原因のひとつです。

キシリトールは白樺から採れる自然甘味成分で、30年ほど前にキシリトールはミュータンス菌が酸をつくるのを防ぎ、歯垢をつくらない作用があることが発見されました。

つまり、キシリトールを摂取していれば虫歯菌は繁殖できず、歯に付着して穴を開けることもできないのです。

アメリカ食品医薬品局もキシリトールの安全性と効果は認めており、これは世界的に使用されキシリトール入りのガムやタブレットも市販されています。

ただし、キシリトールの合有量が少ないと、効果も十分ではありません。

そこで、フィンランドは100%キシリトールガムを1日3回、5分間毎食後噛むことを推奨しています。それが虫歯を激減させたひとつの理由です。

人は簡単で効果的な方法でないと、中々新しい習慣は受け入れてくれないのです。

その点、この食後にキシリトール入りのガムを噛むだけという方法は、歯磨きに比べるとずっと楽なので楽しい習慣です。それが国全体に広がった大きな理由といえます。

※フィンランド方式は日本でも広がりつつある

このように北欧の虫歯対策は30年以上の実績をつくってきました。

虫歯ができなければ子どもは、苦痛な治療から解放されます。医療費の点からも、将来的にはるかに安くなります。

最近では、この北欧の方法を取り入れる歯科医院も増えてきました。「フィンランド方式」といった名前で紹介されています。

フィンランド方式の歯医者では削って詰める治療はできるだけ行わず、定期的にフッ素を塗布し、キシリトールガムを噛んでもらい、子どもたちに「歯医者さんは、ちっとも痛くないし、楽しいところ」 という認識をもってもらっているそうです。

さらに虫歯予防のキシリトールガムを噛むことで、家族で定期健診に行こうという心の回路をつくることを、もっとも大切にしています。

キシリトールを使えば虫歯を予防できる→治療をしない歯医者さんに行くのは苦痛でも何でもない→だから歯医者さんに行こう、という連鎖ができる。

理想的な歯科予防のやり方ですね。

フィンランドの歯の事情はもはや日本と全く違う

現在、フィンランドでは、「歯は治療するものではなく予防するもの」という意識が国民に根づいています。

母親と乳幼児にフッ素の飲み薬と歯科専用のフッ素をより多く含んだ歯磨き剤を使用してもらい、もし小さい虫歯があれば、歯科医院で高濃度のフッ素を塗って再石灰化を促します。

歯科医院では定期検査を行い、ミュータンス菌のチェックや虫歯の進行度などを調べます。

虫歯が悪化せず、溶けた部分が再石灰化で硬くなりこれ以上の進行がないことが確認できたら、そこでは積極的に削る治療は行いません。

虫歯治療の必要がほとんどないため、 一般歯科医師は移民などの大人の治療、歯の矯正やメンテナンスを行うのが主な仕事になっています。

フィンランドでは今や虫歯が珍しいため「虫歯が多い子どもは、家で虐待(ネグレクト)を受けている可能性がある」と、調査員がその家庭に調査に入ることもあるほどです。

良い医者=病気を発症させない医者、という考え

日本では病気を治してくれる医師=良い医師と思われています。

一方、フインランドでは良い医師とは「病気をつくらない医師」だと考えられています。病気を治してくれる医師はあくまで普通の医師止まりという認識です。

東洋医学でも「良医は未病を治す」という言葉があります。病気になる前に予防するのが良医ということです。

この考え方からすると一生懸命「早期発見・早期治療」をするのは良医とはいえませんね。

口の中に虫歯ができ、虫歯の種が口全体にまかれた状態で、早期発見して治療する。口中にまかれた爆弾がある日爆発するように、だんだんとあちこち悪くなっていくのを、どんどんと見つけて治療していく・・・

これではもぐらたたきと同じです。

その前の段階で、虫歯の原因を潰すことにもっともっと力を入れるべきではないでしょうか。

フィンランドでは逆に歯を磨かなくなった子どもが現れた

フィンランドでは虫歯治療が激減して、代わりに口腔外科、矯正、インプラント治療が盛んです。

40代、50代は虫歯ゼロの医療が導入されたころに子どもだった世代ですから虫歯がありません。ですから、その子どもたちにも虫歯がないのが普通です。

生まれたときから虫歯とは無関係の世界に生きていると、歯を磨かない子どもが出てきます。

ところが面白いことに、口の中が不潔でも原因となるミュータンス菌が定着していないため虫歯にならないのです。

とはいえ、口内が不潔だと今度は歯周病になる子どもが出てきました。

そのためフィンランドでは現在も引き続き口の中をきれいにするクリーニングは重要視されています。

現在の私たち日本人が一生懸命歯を磨くのは虫歯になるからで、私たちも30年後には虫歯にならないからと、歯を磨かなくなっているかもしれません。

虫歯の子どもは虐待を疑われる

スウエーデンもフィンランドと同様、子どもの虫歯はほぼ無くなった国です。

そのため「子どもの虫歯=親の恥」という考えが広く浸透していて、子どもが虫歯になろうものなら「親は一体どうなっているんだ?」と怪訝な目で見られてしまうことすらあるそうです。

極端な話、子どもの虫歯は家庭内で虐待(ネグレクト)を疑われるほどです。

最近、日本でも歯科医が虐待されている子どもを発見できると話題になっていますが、北欧では十数年前からそれが実行されています。歯科医が子どもの歯をチェックして、歯の損傷がひどいと保健所などに通報するようになっているのです。

通報を受けた保健所では、その子どもの家に行って虐待(ネグレクト)が起きていないかを調べます。

歯科医が子どもの歯を診て、歯だけではなく体の虐待も監視することが以前から行われています。虫歯がない国だからできることです。

歯医者=痛いところという認識は古い!

昔は、罰を受けに行くような気持ちで歯医者さんに行ったわけですが、この嫌な気持ちこそが、歯科医院から足を遠ざけてきた最大の理由です。

虫歯があっても無理に治療せずに、クリーニングだけをしてくれる場所なら、通院がいやなどころか、楽しいと感じてくれる人が子どもだけでなく大人でも増えるはずです。

日本の歯科医療には、こういった方法の普及も必要ではないでしょうか。

「3ヵ月ごとに通院して、虫歯が大きくなるか小さくなるか見ていきましょう」といって、痛くなったらいつでも来てくださいという姿勢をとれば、患者さんはもっと気軽に来てくれます。

痛くなったり、本人が治す気持ちになったら初めて治療すればいいのです。

クリーニングだけ行うなら、歯科衛生士でも可能です。フィンランドには歯科衛生士だけで歯のクリーニングができる歯科クリニックもあるくらいです。残念ながら、日本では医療システム上できません。

ちなみに、クリーニングもその人が快適と感じるところまで行い、汚れを完璧に取るために、痛みや不快感を与えるようなことはしません。

日本人はとても真面目なので、歯科衛生士も歯科医も患者さんのためとばかり、自分の気がすむまでクリーニングをやってしまいがちですが、患者さんによってはそれがストレスになることもあります。

少し強くやると、痛み、しみる、不快感などを感じる方もいます。それが心のブロックにつながることもあるのです。

こういった心理面を患者さんとコミュニケーションをとりながら、歯科治療やクリーニングを行うことが大切なんですね。

日本でも、このような予防歯科が早くから普及していれば、いまの大人も虫歯ゼロだったかもしれません。

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